「わたしは『本当の自分』が知りたい」
あなたはそう思うかもしれません。
けれども、あなた自身が、
「本当の自分」なのです。
あなた自身が「知」そのものなのです。
エックハルト・トール著
「世界で一番古くて大切なスピリチュアルの教え 」
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端午の節句を祝うために、
近所の屋根に大きな鯉のぼりがはためき、
青空を昇る龍のように、どこまでもどこまでも、風にのっていました。
木の年輪を見つめるように、
私たちの内側の年輪を見つめる必要があります。
子供時代、いくつもの一瞬一瞬を重ねて、今、こうして大人になっていますが、
ふとした瞬間、反射的に生じる感情は、
直径もわずかな、まだ青々として柔らかい苗木であったころの自分が、
いまだにたたずんで、びくりと反応したり、怒ったり、おびえたりしています。
誰しもが、パンドラの箱を大切にしまってあります。
その箱は、時間を重ねるにしたがい重さを増し、
鍵は強固になり、
何が入っていたか判らぬまま、厳重に保管されます。
愛されない、私は悪くない、判ってもらえない。
箱を未だに抱えているのは、どのときの自分でしょうか。
例えばもし、その箱を手にするきっかけになった人と、
もうコミュニケートできなかったり、
コミュニケートすることに並々ならぬストレスがあるとき、
大人になっている自分の前に、
その箱を抱えている小さな自分に来てもらって、
一緒に、その箱にさよならしましょう。
小さな椅子には、「あの時」の自分が座っています。
足をブラブラさせたり、もしくは泣きじゃくっていたり。
怒ってすねて、下を見ているかもしれません。
大人である自分は、その出来事に対して、
できうる限りの違った見方を、小さな自分と探ります。
その嫌な出来事を引き起こした相手は、どんな気持ちだっただろうか。
相手は、幸せな状態であっただろうか。
その箱を、いつまで大事にしようか。
よくがんばった。
悪くない。
欲しかった言葉を、かけてあげてください。
その小さなわたしを抱きしめて、いい子いい子と頭をなでてあげて下さい。
服、
撫でた髪の触感、
子供特有の熱い体温、
湿った息、
自分の洋服に染み込むな涙や鼻水、
丁寧に感じながら、いい子いい子、してあげてください。
可能なら、そのパンドラの蓋を開けてみてください。
小さなわたしは、怖がってあなたの後ろに隠れてしまいます。
大人のあなたも、鍵が頑丈でちょっと力が入ります。
小さな子のドキドキが伝染って、自分まで緊張してしまいます。
その箱は、ずいぶん昔のものです。
生々しく、グロテスクなものが入っていても、
十年も経てば、カラカラに乾いています。
大丈夫。
後ろで震える子供の手をポンポンと叩き、
あなたは箱の蓋を開けます。
その瞬間。
箱の中からは、美しい白い蝶が何万羽と飛び立ち、
待ってましたとばかりに草々が溢れ伸び、
まぶしい花びらがこぼれ落ち、
辺りは一面、どこまでもつづく草原が広がります。
手をつないで。
箱からは、途切れることなく蝶が飛び立って行きます。
蝶が飛び立つ早さで、少しずつ、身体が軽くなって、ふわっと浮いてくるくらいです。
手をつないで。
湿った手のひらを、ぎゅっとつないであげて。
オパールのように色を変える蝶を見て、小さなわたしは口を開けて目を輝かせています。
視界のすべてにぐんぐん草花が広がって行き、
緑の絨毯が敷き詰められ、花々が色を添えます。
しゃがんで、小さなわたしと同じ目線で、世界を見つめてみてください。
向こう側から、太陽がゆっくりと沈み、辺りを赤く染め上げます。
太陽がこちらに向かってくるように、信じられないほど大きな太陽です。
小さなわたしの頬は赤く染まり、その瞳の中に映る太陽は命そのものです。
ゆっくりと太陽が私たちを撫でながらさっていくと、
びっくりするほどの星が頭上に輝き、目が痛いほどに輝いています。
360度、星が満ちていて、水平線にまで星が敷き詰められ、
上も下もなく、首が痛くなるぐらい、二人でぐるぐると空を見上げます。
小さなわたしが、右側にゆらめくものを見つけてくれます。
オーロラです。
ぐんぐんとカーテンが揺らめき、空は見る間に、
緑色の大きなオーロラのカーテンでいっぱいです。
気付けばあたりは雪のように真っ白で、
吐く息も白くなるけれど、寒くなんかありません。
もう大丈夫。
小さなわたしに言ってあげましょう。
もう大丈夫。
小さなわたしは、あなたに言ってくれます。
つらかったね。
小さなわたしは、あなたをいい子いい子してくれます。
よくがんばったね。
小さなわたしは、いつのまにかあなたより背が高くなり、
毎日鏡でみる顔をして、わたしを撫でてくれます。
よくがんばって、いままで生きてきたね。
大きなわたしは、わたしを抱きしめ、頭を撫でてくれます。
温かな腕でぎゅっと抱きしめてくれます。
しばらくこんなふうに、抱きしめられていなかったことを思い出して、
ちょっと泣いてしまいます。
よくがんばったね。
大きなわたしが、わたしを抱きしめてくれます。
もういいよ。
今まで、地面にめり込むほどに重くなっていた箱は、
空に溶け、星に溶け、キラキラと世界を照らします。
美しく、美しく、美しく。
世界はどこまでも美しく。
大きな私に抱きしめられたわたしの周りを、小さなわたしが嬉しそうに走り回ります。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
自分の内側で、「あの時」のままでいるわたしに、
声をかけ、旅に出てみて下さい。
景色は、どんな風にも変えていけます。
手をつないで。
自分の中の、小さな自分と。
鯉のぼりがはためいています。
青空に向かって、いつまでもはためいています。
その背中に乗るのに、ためらいはいりません。
年齢制限もありません。
今こそ、乗ってみるべき時ではないですか。
◆チベット玉樹大地震の被災者の方々に、平穏な日々がもたらされますように◆
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