2010年5月9日日曜日

〜 顕現 「ユトク伝」 〜

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わたしは概念を超えた空性に住し、


周囲に愛と慈悲の空間を創りだした。


そこに信仰と誓願の坐具を広げ、


深遠なる生起次第の馬に乗り、


さらに深遠なる究境次第の飾りを身につけた。


わたしは生起・究境の二階梯を統合して


自らを御し、完全な無の状態にとどまったのだ。


中川和也訳
「ユトク伝〜チベット医学の教えと伝説」


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いくつもの手を持つ観音さまや、


馬の顔をした仏さまが、


突然現れたら、


一瞬のひるみもなく受け入れる準備ができているでしょうか。






そんなことを考えてしまうのが、


「ユトク伝」


チベットにおいて、第二の薬師仏と崇められる、偉大な医聖の伝説をまとめた本です。




衆生を病や苦しみから救う為、幾度も医の道を繰り返して転生し、


薬師仏より指示を賜り、あらゆる医学と法をおさめた、ユトクさんは、


ラサのメンツィーカンにも祀られています。






この本は、あらゆることが含まれていて、


1度や2度ではその深遠なる物語に追いつかないのですが、


まず前提として、




< 顕現 >




これが、当然のようにして物語が展開します。




仏に祈り、


その仏の印を持った、一般の姿をした人々、


恐ろしい姿をした憤怒尊やダーキニ、


そして深く帰依した薬師仏や、さまざまな仏が、


当然のように、現れては語り始めます。




さまざまな形で現れるので、


ときにユトクさんも、「これは修行が足りずに生じる幻影か」と


戸惑うこともしばしばです。




疑う余地のないほどに「衆生のため」に在るかどうかを常に試され、


あらゆる指示が、仏から出されます。






「顕現」する。






仏に出逢うことが目的ではなく、


そこから先に、真の目的がある。






この本を読むと、


ハリーポッターの9と3/4番線ホームにスッと入りこむことくらい、


なんてことないと思わずにはおれません。






チベットの歴史を飾るあらゆる偉人の名も連なり、


特に、遠い未来のミラレパの誕生を預言しにきたダーキニが、


ユトクさんに、「彼の為に洞窟を用意しろ」と言って、


その土地の悪しき影響を払い、


導きとして出逢ったモン族の女性の力を借りて洞窟を掘り、


泉を湧かせる場面は印象的です。




どのようにしてインドから四部医典が伝わり、整えられ、編纂されたのかを、


この一冊はとても深く紡いでくれます。




「顕現」するあらゆる姿をした仏やダーキニと、


いつでも対話できる状態であるか・・・。




なによりも顕現について考えるきっかけを、わたしに与えてくれました。






もし、わたしの目の前に、




お不動さんや、


千手観音さんが現れたとき、




驚かずに言葉を聞くことができる自分でありたいと思います。








そして、そのために、




今いる人々の言葉を、




よく聞き入れるようにしたいと思います。






顕現は、あらゆる形で現れており、


いまこの瞬間にも、すべては何らかのサインを放っている気がするからです。










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2010年5月6日木曜日

〜 わたしの中の小さなわたしへ 〜

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「わたしは『本当の自分』が知りたい」


あなたはそう思うかもしれません。


けれども、あなた自身が、


「本当の自分」なのです。


あなた自身が「知」そのものなのです。




エックハルト・トール著
世界で一番古くて大切なスピリチュアルの教え 」


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端午の節句を祝うために、


近所の屋根に大きな鯉のぼりがはためき、


青空を昇る龍のように、どこまでもどこまでも、風にのっていました。








木の年輪を見つめるように、


私たちの内側の年輪を見つめる必要があります。






子供時代、いくつもの一瞬一瞬を重ねて、今、こうして大人になっていますが、




ふとした瞬間、反射的に生じる感情は、




直径もわずかな、まだ青々として柔らかい苗木であったころの自分が、




いまだにたたずんで、びくりと反応したり、怒ったり、おびえたりしています。






誰しもが、パンドラの箱を大切にしまってあります。




その箱は、時間を重ねるにしたがい重さを増し、


鍵は強固になり、


何が入っていたか判らぬまま、厳重に保管されます。






愛されない、私は悪くない、判ってもらえない。




箱を未だに抱えているのは、どのときの自分でしょうか。








例えばもし、その箱を手にするきっかけになった人と、


もうコミュニケートできなかったり、


コミュニケートすることに並々ならぬストレスがあるとき、




大人になっている自分の前に、


その箱を抱えている小さな自分に来てもらって、


一緒に、その箱にさよならしましょう。






小さな椅子には、「あの時」の自分が座っています。


足をブラブラさせたり、もしくは泣きじゃくっていたり。


怒ってすねて、下を見ているかもしれません。






大人である自分は、その出来事に対して、


できうる限りの違った見方を、小さな自分と探ります。




その嫌な出来事を引き起こした相手は、どんな気持ちだっただろうか。


相手は、幸せな状態であっただろうか。




その箱を、いつまで大事にしようか。




よくがんばった。


悪くない。




欲しかった言葉を、かけてあげてください。




その小さなわたしを抱きしめて、いい子いい子と頭をなでてあげて下さい。




服、


撫でた髪の触感、


子供特有の熱い体温、


湿った息、


自分の洋服に染み込むな涙や鼻水、






丁寧に感じながら、いい子いい子、してあげてください。






可能なら、そのパンドラの蓋を開けてみてください。




小さなわたしは、怖がってあなたの後ろに隠れてしまいます。




大人のあなたも、鍵が頑丈でちょっと力が入ります。


小さな子のドキドキが伝染って、自分まで緊張してしまいます。








その箱は、ずいぶん昔のものです。




生々しく、グロテスクなものが入っていても、




十年も経てば、カラカラに乾いています。




大丈夫。






後ろで震える子供の手をポンポンと叩き、


あなたは箱の蓋を開けます。






その瞬間。






箱の中からは、美しい白い蝶が何万羽と飛び立ち、


待ってましたとばかりに草々が溢れ伸び、


まぶしい花びらがこぼれ落ち、


辺りは一面、どこまでもつづく草原が広がります。








手をつないで。






箱からは、途切れることなく蝶が飛び立って行きます。




蝶が飛び立つ早さで、少しずつ、身体が軽くなって、ふわっと浮いてくるくらいです。








手をつないで。


湿った手のひらを、ぎゅっとつないであげて。






オパールのように色を変える蝶を見て、小さなわたしは口を開けて目を輝かせています。






視界のすべてにぐんぐん草花が広がって行き、


緑の絨毯が敷き詰められ、花々が色を添えます。






しゃがんで、小さなわたしと同じ目線で、世界を見つめてみてください。






向こう側から、太陽がゆっくりと沈み、辺りを赤く染め上げます。


太陽がこちらに向かってくるように、信じられないほど大きな太陽です。




小さなわたしの頬は赤く染まり、その瞳の中に映る太陽は命そのものです。






ゆっくりと太陽が私たちを撫でながらさっていくと、


びっくりするほどの星が頭上に輝き、目が痛いほどに輝いています。




360度、星が満ちていて、水平線にまで星が敷き詰められ、


上も下もなく、首が痛くなるぐらい、二人でぐるぐると空を見上げます。




小さなわたしが、右側にゆらめくものを見つけてくれます。


オーロラです。




ぐんぐんとカーテンが揺らめき、空は見る間に、


緑色の大きなオーロラのカーテンでいっぱいです。


気付けばあたりは雪のように真っ白で、


吐く息も白くなるけれど、寒くなんかありません。




もう大丈夫。




小さなわたしに言ってあげましょう。




もう大丈夫。




小さなわたしは、あなたに言ってくれます。




つらかったね。




小さなわたしは、あなたをいい子いい子してくれます。




よくがんばったね。




小さなわたしは、いつのまにかあなたより背が高くなり、


毎日鏡でみる顔をして、わたしを撫でてくれます。




よくがんばって、いままで生きてきたね。




大きなわたしは、わたしを抱きしめ、頭を撫でてくれます。


温かな腕でぎゅっと抱きしめてくれます。




しばらくこんなふうに、抱きしめられていなかったことを思い出して、


ちょっと泣いてしまいます。




よくがんばったね。




大きなわたしが、わたしを抱きしめてくれます。




もういいよ。






今まで、地面にめり込むほどに重くなっていた箱は、


空に溶け、星に溶け、キラキラと世界を照らします。






美しく、美しく、美しく。




世界はどこまでも美しく。




大きな私に抱きしめられたわたしの周りを、小さなわたしが嬉しそうに走り回ります。






大丈夫。


大丈夫。


大丈夫。






自分の内側で、「あの時」のままでいるわたしに、




声をかけ、旅に出てみて下さい。






景色は、どんな風にも変えていけます。




手をつないで。




自分の中の、小さな自分と。






鯉のぼりがはためいています。


青空に向かって、いつまでもはためいています。




その背中に乗るのに、ためらいはいりません。




年齢制限もありません。




今こそ、乗ってみるべき時ではないですか。



















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